ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 うむ。立ち上がって棚を見据えたファラスと、再びカウンターに乗り上がってぶらぶらする足を待っていたかのように、棚からヒヒッと笑い声が聞こえました。
「転送の門の原型は、錬金術師の祖ユマテルが生み出した技術だ。それを発展させ、改良を加えた最新の状態がキィンベルの軍部区画に置かれた転送の門なんだ」
 つまりね。棚は勿体ぶるように、間を開けます。
「型が古いものは機密の問題から技術の凍結か破棄かされるんだけど、錬金術は完璧ではないという前提から、必ず同じ条件で再現できるだけの資料が残っているんだ。王立アルケミアなら、いつでも再現できる。そして再現された一つが、所長の特権の一つ『秘密の通路』なんだよ」
 『秘密の通路』というだけあって本来は秘密であるのですが、最近はヨンゲ所長のせいで公になってしまったのです。ヨンゲ所長は非常に目立つのがお好きな方で、酒場で気に入った娘に甘く囁かれれば、国家機密すら喋ってしまうような所がありましたからね。
「では、秘密の通路を使えば王宮へ行けるのか?」
 前のめりになるファラスに、私は緩く首を横に振る。
「秘密の通路と呼ばれるそれは、王立アルケミアと歴代所長に与えられた邸宅を繋いでいます。王宮に行く事はできませんし、アルケミアの機密を守る為に誰もが使える訳ではありません」
 しかし。私はきょとんと見上げるプクリポさんを示します。
「先代所長ワグミカが現所長ヨンゲの元へ行くよう指示したのなら、彼らなら秘密の通路を通る事ができるでしょう」
 そうそう。棚は同意して引き攣った笑い声を漏らしました。
「彼らに王立アルケミアの錬金術師を連れてきてもらえれば、転送の門を直してもらって王宮に行けるようになるよ」
「なんという名案!」
 ファラスはその大きな手をプクリポの脇の下に手に入れると、軽々と持ち上げてしまいました。軽々と天井に舞い上がった赤を受け止めると、ぐっと伸びた手に高々と掲げられる。道が目的地へ繋がった喜びに、驚きに目を白黒するプクリポの様子など気がつかないでしょう。
「ルアム殿! このファラスも、同行させてもらう! こう見えて、腕には自信があるのだ! 」
「え! あ! 待って! 相棒の意見も、き、聞かな、わわっ!」
 勢いよく振り回されては、元気に跳ね回る種族でも目を回してしまうのですね。あいぼーう! 悲鳴がぐるんぐるんと振り撒かれる中で、入店を告げるベルが鳴ったのです。
「兄さんったら、そんな大声出さなくても聞こえるよ」
 ファラスの身に染みついた剣士としての、動きだったのでしょう。ぴたりと動きを止め、反撃出来るように肩幅に開いた足に力が籠もる。すっと素早く巡らせた視線が入り口に立つ少年へ向けられると、後ろに撫で付けた髪から、一房がはらりと額に落ちる。
 背に背負った弓が歩く度に背で跳ね、腰の矢筒からざらざらと矢が動く音が聞こえます。森の緑に溶け込むように染色された原始獣のコートが、高度な文明に臆する事なく堂々と踏み込んできます。ふんわりとした髪の輪郭が朝露に濡れたラベンダーの色の線を描き、逆光に沈んだ闇の中から双眸が煌々と光っていました。店内のまろやかな明かりに闇は叩き落とされ、小麦色の健康的な少年が立っていました。
 ファラスの手から液体が滴るように抜け出した赤毛が、少年の足にしがみつきます。あいぼーう。情けない声に、少年は呆れたように一つ息を零して優しい笑みを浮かべました。
 どんな強敵にも事態にも臆さぬファラスが、ぎこちなく少年に向き合いました。喉の渇きに喘ぐように唇を戦慄かせ、一つの名前を囁いた。その囁きに少年は笑みを深めた。
「はい。僕もルアムです。初めまして、ファラスさん」

あぁー。あからさまで技量のなさを感じるー。

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