ハコの厚みはここ次第!
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■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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雪原の王者シルバリヌスが雄叫びを上げ、木の上に積もった雪がぞぼっと音を立てて落ちていったわ。臆病なもこもこ獣が毛玉になり、つららスライムが殻の中に閉じ籠る中、赤いドラゴンが呼応するように咆哮を上げた。
真紅の鱗はまるで雪原の中に築かれた蜘蛛の巣の火のようで、遠巻きでも生命の光に赤々と燃えている。キィンベルの街灯くらい背が高くて、両開きの大扉くらいの横幅がある。耳の位置には大きな鰭のような器官があって、一瞬翼かと見紛う大きさだ。英雄譚に見るようなドラゴンにしてはずんぐりと大きいけれど、この人の寄り付かぬ極寒の地の王に挑むには十分な貫禄があるの。
挑戦者を迎え撃つシルバリヌスは、空想の生き物のようだ。馬の首に当たるところから、新雪に良く似た白銀の体表に覆われた筋肉隆々の人間の上半身が生えている。当然魔物なので厳しい顔の額からは天を突くように二本の角が伸び、金色の髪も赤い瞳も人成らざる金属めいた光沢を帯びている。さらに下半身は四つ足の獣だが馬の蹄ではなくて、三つの爪が生えた鳥のよう。馬ならば人が乗る場所には大きな翼が生えていて、その巨体を浮かすのだろう。
両者はじりじりと睨み合い、人間なら腰まで埋まりそうな積雪をものともせずに攻撃の瞬間を窺っていたわ。雪はぼたぼたと大ぶりの花弁が舞うように降りしきり、先程の咆哮が嘘だったかのような静けさを取り戻していた。毛玉から可愛らしい触覚が出て危険がないかを探り、つららの穴からふたつの目が瞬く。それでも世界が凍りついて動かないのは、相対する二つの殺気が鮮烈だからだ。
それにしても寒いわ。
例え同行者の腕に抱かれ風を凌いで体温の暖かさに背を預けていても、この寒さではどんなに猫の毛皮が暖かいからって風邪をひいてしまうわ。ぶるりと体を震わせ、鼻の先に雪が一片。じゅわりと体温で溶けて鼻先を濡らすと、言いようもない不快感が体を駆け巡った。
ぷしゅん!
静まり返った雪原に、くしゃみが弾けた。
猫の小さなくしゃみを切っ掛けに、竜が駆け出す。その太い足が巨体をグンと前へ押し出して、まるで大岩が落ちてきたような信じられない速度でシルバリヌスに迫る。踏み込んだ足を軸に体を捻ると、破城槌の太さの尾が白銀の銅を薙ぐように迫る。
シルバリヌスは地面を蹴ると、その重さを感じさせないように軽やかに舞い上がった。翼を広げると真っ白い空間が黒く切り取られ、振り翳した黄金の斧がぎらりと光る。赤い瞳が殺意に見開かれ、竜の首を一刀で刎ねる為に吹雪の音を伴って振り下ろされた。
竜は身を捻って低くした上半身を地面に押し付け支えにすると、振り抜いた尾が鞭のようにしなる。返す刀のように再びシルバリヌスに迫った尾は、先端で勢いは明らかに弱いものの厳しい横っ面を叩いたのだ。真紅の鱗を雪まみれにして転がり凶撃を避けると、振り下ろすように地面を叩いた尾と重量のある下半身、そして腹筋の力でバネのように跳ね起きた。その勢いは天を突く間欠泉のように、真紅の額がシルバリヌスの額を割ったの!
まるで岩同士がぶつかり合うような激しい音が、雪を蹴散らし響き渡る。
その余韻が裾野まですっぽりと雪を被った山々に吸い込まれ、赤と白の巨体は凍りついたかのように動かない。全ての生き物が息を殺して成り行きを見守る世界は、自分の心臓の音しか聞こえないくらいの静けさに包まれていた。
ぐらり。重なった影が大きく傾ぐ。
どぉん! 雪が震え落ちる音が広がる中心で倒れたのは、真っ白い雪原の王者だった。
「お見事!」
私の同行者が歓声を上げて、感激で激しく手を叩く。私は揺れ動く腕から逃げ出して、彼の外套の重なる部分に腰を落ち着けたの。全く、こんな可愛いレディがいるんだから、子供みたいにはしゃがないで欲しいわ。私は不満そうに鳴きながら、誂えたように据わりが良い外套が重なる場所に腰を下ろした。
ぼすぼすと柔らかい新雪を割って進むと、首を巡らせた赤い竜の鱗を分厚い皮のグローブで叩いた。素晴らしい戦いでしたよ。そう、心からの賛辞を贈られて赤い竜は嬉しそうにごろごろと喉を鳴らしたの。野生の竜とは思えない、まるで魔法生物のような人間への懐き具合だわ。
同行者は額がぼっこりと膨らんだシルバリヌスへ目を向けた。
「目的のものは金髪の中に潜んでいるはずです」
今回は初っ端から戦闘でっす!
拍手に感謝!ぱちぱちっとありがとうございます!
真紅の鱗はまるで雪原の中に築かれた蜘蛛の巣の火のようで、遠巻きでも生命の光に赤々と燃えている。キィンベルの街灯くらい背が高くて、両開きの大扉くらいの横幅がある。耳の位置には大きな鰭のような器官があって、一瞬翼かと見紛う大きさだ。英雄譚に見るようなドラゴンにしてはずんぐりと大きいけれど、この人の寄り付かぬ極寒の地の王に挑むには十分な貫禄があるの。
挑戦者を迎え撃つシルバリヌスは、空想の生き物のようだ。馬の首に当たるところから、新雪に良く似た白銀の体表に覆われた筋肉隆々の人間の上半身が生えている。当然魔物なので厳しい顔の額からは天を突くように二本の角が伸び、金色の髪も赤い瞳も人成らざる金属めいた光沢を帯びている。さらに下半身は四つ足の獣だが馬の蹄ではなくて、三つの爪が生えた鳥のよう。馬ならば人が乗る場所には大きな翼が生えていて、その巨体を浮かすのだろう。
両者はじりじりと睨み合い、人間なら腰まで埋まりそうな積雪をものともせずに攻撃の瞬間を窺っていたわ。雪はぼたぼたと大ぶりの花弁が舞うように降りしきり、先程の咆哮が嘘だったかのような静けさを取り戻していた。毛玉から可愛らしい触覚が出て危険がないかを探り、つららの穴からふたつの目が瞬く。それでも世界が凍りついて動かないのは、相対する二つの殺気が鮮烈だからだ。
それにしても寒いわ。
例え同行者の腕に抱かれ風を凌いで体温の暖かさに背を預けていても、この寒さではどんなに猫の毛皮が暖かいからって風邪をひいてしまうわ。ぶるりと体を震わせ、鼻の先に雪が一片。じゅわりと体温で溶けて鼻先を濡らすと、言いようもない不快感が体を駆け巡った。
ぷしゅん!
静まり返った雪原に、くしゃみが弾けた。
猫の小さなくしゃみを切っ掛けに、竜が駆け出す。その太い足が巨体をグンと前へ押し出して、まるで大岩が落ちてきたような信じられない速度でシルバリヌスに迫る。踏み込んだ足を軸に体を捻ると、破城槌の太さの尾が白銀の銅を薙ぐように迫る。
シルバリヌスは地面を蹴ると、その重さを感じさせないように軽やかに舞い上がった。翼を広げると真っ白い空間が黒く切り取られ、振り翳した黄金の斧がぎらりと光る。赤い瞳が殺意に見開かれ、竜の首を一刀で刎ねる為に吹雪の音を伴って振り下ろされた。
竜は身を捻って低くした上半身を地面に押し付け支えにすると、振り抜いた尾が鞭のようにしなる。返す刀のように再びシルバリヌスに迫った尾は、先端で勢いは明らかに弱いものの厳しい横っ面を叩いたのだ。真紅の鱗を雪まみれにして転がり凶撃を避けると、振り下ろすように地面を叩いた尾と重量のある下半身、そして腹筋の力でバネのように跳ね起きた。その勢いは天を突く間欠泉のように、真紅の額がシルバリヌスの額を割ったの!
まるで岩同士がぶつかり合うような激しい音が、雪を蹴散らし響き渡る。
その余韻が裾野まですっぽりと雪を被った山々に吸い込まれ、赤と白の巨体は凍りついたかのように動かない。全ての生き物が息を殺して成り行きを見守る世界は、自分の心臓の音しか聞こえないくらいの静けさに包まれていた。
ぐらり。重なった影が大きく傾ぐ。
どぉん! 雪が震え落ちる音が広がる中心で倒れたのは、真っ白い雪原の王者だった。
「お見事!」
私の同行者が歓声を上げて、感激で激しく手を叩く。私は揺れ動く腕から逃げ出して、彼の外套の重なる部分に腰を落ち着けたの。全く、こんな可愛いレディがいるんだから、子供みたいにはしゃがないで欲しいわ。私は不満そうに鳴きながら、誂えたように据わりが良い外套が重なる場所に腰を下ろした。
ぼすぼすと柔らかい新雪を割って進むと、首を巡らせた赤い竜の鱗を分厚い皮のグローブで叩いた。素晴らしい戦いでしたよ。そう、心からの賛辞を贈られて赤い竜は嬉しそうにごろごろと喉を鳴らしたの。野生の竜とは思えない、まるで魔法生物のような人間への懐き具合だわ。
同行者は額がぼっこりと膨らんだシルバリヌスへ目を向けた。
「目的のものは金髪の中に潜んでいるはずです」
今回は初っ端から戦闘でっす!
拍手に感謝!ぱちぱちっとありがとうございます!
