ハコの厚みはここ次第!
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■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
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最大出力の閃光を放った事で壊れた『星華のライト』から、光が失われていきます。もう、私の前にはキングリザードの駒も、真っ二つに割れた盤と底なしの亀裂も、山のように巨大なメレアーデ様の姿もありません。転送の門の丸みを帯びた壁面と、ザグルフを含めた行方不明になっていた人々が眠っていました。
ここは王都キィンベルの転送の門でしょう。戻ってこれたようですね。
眠る人々の真ん中で、ランプを抱えた女性が座り込んでいました。アルケミアの研究者が好む白いローブの上に、美しい銀髪が流れるように落ちている。美しかっただろう面影はあれど、その顔はやつれて髑髏に白い皮膚を被せたようでした。
ランプには美しいステンドグラスのガラスが嵌め込まれています。森のステンドグラスの光が当たった壁には、遥か海を超えた先にあるエルフの神エルドナの大陸に聳え立つ世界樹がそこにあるかのように映し出されています。美しい海のステンドグラスの先にはエテーネ王国の近海では決して見ることのできない美しい真っ青な海と空が、真っ白な雪原のステンドグラスには雪原と夜空に浮かぶオーロラが、まるで窓の向こうの景色のようにそこにありました。
レイミリア幻想機。
かつて、王立アルケミアにはレイミリアという所長がいました。彼女が研究していたのは、使用者の思念を投射するというもの。この研究が実を結べば、使用者の経験を他者に己の事のように追体験させる事ができるようになっていたでしょう。
「レイミリア様」
私はランプを抱く女性に歩み寄る。身を強ばらせ、壊されまいとランプをキツく抱き締めるレイミリア様の前に、私は膝を折って目線を合わせました。ランプに額を押し付け、白い頭皮と銀の渦が生み出す旋毛を見据えます。
「貴方の研究成果は、貴方が満足する結果には程遠いものだったかもしれません」
使用者の思念を投射する。
『星華のライト』の閃光は、使用者の思念を驚きと眩しさで染め上げました。そうして生まれた綻びのお陰で、私は思念の主であるレイミリア様に対峙する事ができたのです。
「しかし、レイミリア様の幻想機を使えば、病床から起き上がれない病人に広い世界を見せる事も、愛した人を亡くした苦しみにもがく者に再会の機会を与える事すらできるでしょう」
私はレイミリア様の手に、そっと自分の手を添えた。冷たく氷のような手でした。
「レイミリア様。貴方の研究はとても素晴らしい」
そっと、萎れた花が水を吸ってもたげるように、才色兼備をほしいままにした女性の顔が上がりました。今まで金食い虫と罵られた研究を素晴らしいと褒められ、呆気にとられた無防備な顔にさっと朱が走るのを、私は美しいと思いました。
レイミリア様は、アルケミアの所長としては不名誉な退場を強いられていました。多額の費用を投じても成果が出なかった責任を取って辞任をしたのです。
結果の出ない研究を続ける苦しみを、完成させたいという執念と願望を、私はどんな才能溢れる錬金術師達よりも理解できると言い切りましょう。不要と切り捨てられた絶望を、顧みられない孤独を、私はレイミリア様と同じくらいに知っています。
こんな私だったから、レイミリア様のことを知っていたのです。
クオード様。私は、私を救ってくれた生涯の主を想う。
貴方が私に手を差し伸べたように、私は彼女を救う事が出来るのでしょうか?
私の問いに主は微笑んだ。いつも気難しい顔で眉間に皺が寄っているけれど、姉上様とご一緒の時は常に、忘れた頃に時々私達臣下に向けてくださる笑み。その笑みが私達の存在を受け入れてくれていると、私達を信じていると実感させてくれるのです。
私はレイミリア様に尊敬の念を込めて、微笑みかけました。
「このような素晴らしい研究を完成してくださり、ありがとうございます」
レイミリア様の瞳から大粒の涙がこぼれ、大きな口を開けて天を仰いだ。幻想機の光を透かした涙が、彼女の苦悩に満ちた人生を映し出す。次第に彼女の家族だろう父と母の姿が、故郷の小さい村が、エテーネの空が映し出され、最後は何も写さなくなった。
「貴女の研究を、私が責任をもって正しく使いましょう」
私は幻想機を受け取り、レイミリア様に誓いました。
っしゃああああ!!!!
転送の門閉鎖事件完走でっす!!!!
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