ハコの厚みはここ次第!
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■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
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王様の弟が暮らす家にしては、静かで質素だった。
こじんまりとした二階建ての家は、古めかしい遺跡みたいな煉瓦造りの壁に蔦が這っている。家の前には大きな湖が広がっていて、一面に白い花が咲いて濃い色の空に光っているみたいだ。玄関横の庭園は自然な感じに手入れされていて、心地よい木陰には木から吊るされたブランコが揺れている。穏やかで心地よい時間を過ごすために、心が砕かれている印象だ。
心配が杞憂だったと、ファラスのあんちゃんは硬い息をゆるりと吐き出した。
ちょろちょろと水が流れ、さわさわと木々の葉っぱが擦れる音が広がる世界に踏み出そうとした瞬間。何かが落ちて壊れる大きな音が、オイラ達の安堵を打ち砕いた。
「…っ!」
ファラスのあんちゃんが矢のように屋敷に向かって駆け出す。ラチックのあんちゃんみたいに筋肉ムキムキなのに、ダッシュランみたいに早いのな! オイラも相棒に短く目配せして、バギの力を繰ってファラスのあんちゃんを追い抜いた。
お屋敷を左手に見つつ、転送の門から玄関に伸びる煉瓦が敷かれた道を走る。一階の窓が割れる音がして、女の人の悲鳴が上がる。オイラは玄関に向けた足をぐっと地面に押し付けて、バネのように方向を変えた。お屋敷の壁伝いに植えられた花々を超えて、メラのように割れた硝子に飛び込むと、腰が抜けた侍女の姉ちゃんと爪を振り上げた異形獣の間に出る。
「立って走って!」
両手に装備した爪を交差して、異形獣の爪を受け止める。
それでも力の強い異形獣の攻撃を止めるなんて、空中に浮いた状態じゃ無理だ。床に叩きつけられる直前に練り上げた強風で、異形獣の爪から逃れて足の間に滑り込む。そのまま尻尾に足を掛けて背後を取ると、頭にひゅるんと伸びた角に爪を叩き込む。びぃいいん。一撃に細長い角が震えて、異形獣の動きが止まる。
その隙にオイラは階段を駆け上って、二階の部屋にいる姉ちゃんに追いつく。
甘いミルクの匂いがする円形の部屋の真ん中には、可愛らしい星のモービルが吊るされていて、木製の揺籠が微かに動いていた。揺籠の中にはふかふかのクッションが敷き詰められて、寝ていた赤ちゃんの形に窪んで温もりが残っている。侍女の姉ちゃんが黒いロングスカートを捌きながら、隠れられそうなソファーの裏を覗き込んでホッと安堵の息を零す。
「マローネ様は御子息様と逃げられたのね」
まだ湯気が立っている紅茶の横には、赤ちゃんの成長を細かく書いた日記がある。几帳面な綺麗な字で、絵もとても上手だ。可愛らしい赤ちゃんの笑顔の絵や、小さい手形や足形を取った紙が日記に挟まれて、マローネママ様がとっても赤ちゃんを大事にしているのが伝わってくる。
ほんわかしてる場合じゃない。
オイラの耳が、階段を上がってくる異形獣の足音を捉える。じゃり。じゃり。鋭い爪が絨毯にめり込んで、その下の床板を引っ掻く音が這い上がってくる。オイラは侍女の姉ちゃんを引っ張って、部屋の扉から一番遠い物陰に押し込んだ。
「オイラが囮になる。その隙に逃げるんだ」
立ち上がって扉に向いたオイラの手を、姉ちゃんが掴んだ。必死な顔で、ぎゅっと強く手を握ってくる。
「マローネ様と、御子息様を、守ってください!」
ファラスのあんちゃんの心配は、的中ってわけか。
弱かろうと現場に一番で駆けつけるルアムは良い子だなって思う。
今回は短めの4話構成でお送りしまっす。
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