ハコの厚みはここ次第!
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■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 遮る物のない直射日光がじりじりと肌を焼き、爽やかな潮風が拭っていく。海の上に築かれた堤防に波が寄せては返し、ざぶんざぶんと私を包み込んでいた。
 メレアーデ様。呼ばれて顔を上げれば、階段の上に小柄な影が見下ろしている。
 肩で切り揃えた新緑の髪はふんわりと頭を覆い、赤い眼鏡のフレームの下に警戒に眇めた瞳が覗く。身長と変わらない両手杖を持ち、魔法使いらしいローブと肩掛けの鞄と冒険者らしい出立ち。腰には魔物避けの鈴が軽やかな音色を響かせている。
 ルアムの友人であるエンジュは、私には馴染みのない特徴を備えていた。
 尖った長い耳に、背に生えた透き通った翅。
 エテーネ王国では珍しいエルフ族の女性は、口元を手で隠しころころと鈴を転がすような笑い声を溢しながら傍に目配せする。穏やかでゆったりとした口調は、成熟した女性のよう。
「お気をつけあそばせ。ここは魔物の棲家ですから、ファラス殿から離れませぬように」
 目配せの意味を汲み取り、半歩後ろに控えていたファラスが『任されよ』と頼もしげに言った。二人の実力者に挟まれる形で、私達は波の音を踏み分けて進む。
 エテーネ王国の隣国リンジャハル。
 我が国の王族が外交デビューを飾る国であり、私も例外ではなかった。クォードを身籠もっていたお母様が来れず、お父様に手を引かれて訪れたのを今も覚えているわ。リンジャハルを治めるリンジャーラ様は明るくて面白いお方で、留守番をしているお母様と もうじき生まれる弟妹の為に、どんなお土産が良いか真剣に考えてくださったのが嬉しかったのを昨日の事のように思い出せる。海に入って遊んだのも初めてで、楽しい思い出がいっぱい詰まっていたリンジャハル。
 疫病を乗り越え奇跡の復興と謳われて間もなく、厄災で滅んだ記憶は新しい。復興を祝う為の式典にはエテーネ王国を代表したパドレ叔父様を筆頭に、多くの民がリンジャハルを訪れて行方不明。
 厄災の渦中にいたファラスは生々しく当時の事を語ってくれた。
 それで、私は知った気になっていた。
 何も。何も無くなっていた。
 白い石壁と石畳に、青い屋根と海が美しいリンジャハルの街並み。白い壁には青い塗料で紋様が書かれ、都市そのものが巨大な魔法の媒体として作られている。それでも家の軒先には住人達が丹精込めて育てた花々が鮮やかに咲き誇り、家々の間には色鮮やかな魔除けの布が潮風に翻る。青い海辺には漁船から船遊び、キィンベルへの定期便まで大小様々な船が停泊していて、多く人で賑わっていた。日に焼けた人々の眩しい笑顔。エテーネ王国とは違った活気に湧いていた光景が、根こそぎ無くなっている。
 土台も潮風に晒されて風化したのか家の痕跡は残っておらず、白い石畳も鬱蒼とした雑草に埋もれている。入り組んだ水路を跨ぐ為の階段も多くが崩壊し、海に突き出すように聳える六つの塔がなければリンジャハルだと気がつけなかっただろう。
 疫病という未曾有の混乱すら乗り越えて復興した大都市が、長い年月をかけても蘇らなかった事実に胸が痛くなる。多くの死が、魔物が湧く環境が、この地に人を住まおうとする意志を手折ってきたのね。
 それに。
 私は海へ目を凝らす。
 晴れ渡った青い海に、線を引いたように続く水平線。
 幼き日に見えていた故郷は、そこになかった。

メレアーデ様 イン リンジャハル!!
現代にエテーネ王国が存在しないって事を、丁寧に掘り下げる事で姫君の傷に塩を塗ってしまう!!!!でも、しょうがないよね!!!ないんだもん!!!!!

手芸もやってるヨォ!!!
ただ、夜勤前とかパーツ切り出した今日の分をクリアすると、執筆しちゃうんだよねぇ(豆腐の意志)

拍手に感謝!あれかな? 200話おめでとうパチパチかな?
なにはともあれ、ありがとうございます!!!

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