ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 エテーネ王国からも遠巻きに見える六つの塔。その中で最も規模が大きく高さを備えた中央棟は、潮風に薄汚れてはいたが大きな破損は見られなかった。ファラスが剣を片手に慎重に扉を開ければ、幼き日の記憶とそう変わらない光景がある。
 リンジャハルの守り神である竜神と建国者であった召喚師の石像が中央に聳え、その裏手に配置された誘いの石碑が淡い光を闇に投げかけている。二つの階段が石像を回り込むように弧を描いて配置され、吹き抜けた高い空間にリンジャハルの海を彷彿とさせる美しいステンドグラスの光が差し込んだ。
 かつんかつんと石の塔の中を反響する足音が潮騒を退け、ぱたぱたと動く可愛らしい翅を追いかけながら進む。回廊から内階段を登り、外の回廊をぐるりと回って外階段を登る。方向感覚が怪しくなってきた頃、一枚の木の扉の前でエンジュは立ち止まった。
 何の変哲もない木の扉。しかし人が去って久しい廃墟において、人の営みを匂わす存在は浮き上がるように目立った。ノブに手を掛けたエンジュは、くるりと私達に振り返った。
「これからお会いするヒストリカ博士ですけれど…」
 魔物が闊歩するリンジャハルを拠点とする、考古学者ヒストリカ博士。このアストルティアで最も五千年前の事に詳しい彼女から直接説明を受けた方がいいだろうと、ルアムの伝手で会う事になった人だ。
 ほっそりとした桜色の指先が丁寧に重ねられ、深々と頭が下げられる。
「お二人にお会いして、感情が荒ぶるかと思います。これも偏に彼女が歴史に真剣に向き合ってきたが故、どうかご容赦ください」
 どういう意味なのかしら? 首を傾げてファラスを見上げるが、精悍な顔に困惑が滲んでるわ。
 私達が顔を見合わせている間に、エンジュは三度ノックして扉を開けた。
「本当に来たぁあああっ!」
 扉の向こうの闇から、悲鳴が迸った。ファラスが剣の柄に手を掛けて前に飛び出し、私は逞しい背中から中を窺う。
 レナートとルアムと猫耳ちゃんを寝泊まりさせてしまった倉庫よりも狭く感じるのは、天井にまで積み上がった本のせいね。テーブルと椅子が置いてあって、そこに腰掛けたら真後ろに本の壁があるくらいに狭い。天井に吊るされた灯りの下、私と年の変わらない女性がテーブルの上にはしたなく乗りあがって睨みつけてくる。
 頭に巻いた布にびっくりするくらい沢山の木彫りのロザリオを挟み込み、手に蝋燭と藁を束ねて人の形にしたような人形を持って ぶんぶんと振り回す。
「あくりょうたいさん! なむあみだぶつ! あーめん! そーめん! ひげそーりー!」
「ヒストリカ! お客さんに失礼だって!」
 メダパニを受けたような女性を引きずり下ろそうと、腰にしがみつくのは少年だ。そんな少年を振り払い、ヒストリカと呼ばれた女性は私達に何かを投げつける!
 ファラスが殆ど受け止めてくれたけれど、砂かしら? あら、しょっぱい。お塩だわ。
「ノー ウェイ! ノー! ウェイ! でしょ、クロニコ! だって、五千年前の人が生きてるだなんて、死んで化けて出なきゃ無理むりムリィ! ひぃえ! リンジャハルの海水で作った、特製ソルト・アタックが効かない! もう無理ぽ…」
「いい加減になさいませ! ヒストリカ博士!」
 エンジュも参戦するけれど、どうにも戦闘向きでない二人掛かりでもヒストリカ博士は止まらないようね。歯を剥き出して、扉の脇に置いてあった突っ張り棒で黄泉送りを試み始めちゃったわ。どったんばったん賑やかでいいけれど、日が暮れてしまうわね。
 ファラス。『はっ』と短い応答が響いて、のそりと大きな背が室内に押し入った。


悪霊退散の件は、第2話の二人のルアムが邂逅した時から引っ張ってきた。
書き終わって詐欺師呼ばわりもありかなって思ったけれど、詐欺師とか言わないのはエンジュの紹介だからだと思います。それに詐欺師って言ったらめっちゃ失礼だろうしなぁ。

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