ハコの厚みはここ次第!
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■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
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人々が一斉に首を垂れ、荒波が一瞬にして凪ぐ。
儀仗兵が恭しく下がると、しゃらりしゃらりと涼やかな音を響かせて壮年の男性が現れる。黒い鳥の尾羽で飾った王冠を戴いた偉丈夫で、戦士と言っても差し支えない頑強な体つきがオレンジ色のローブから浮き上がっている。空色のマントを留めた胸元で、金の留金に刻まれた王章が輝いた。
一瞬、人生で初めて出会った王様が脳裏を過ったのは、僕らの殺害を画策する首謀者だからかもしれない。黒い羽飾りは王冠の飾りとして流行ってるんだろうか? 王は畏まる民をゆっくりと見回した。
「皆のもの、面を上げよ」
ざぁっと顔を上げた民が見るのは、青紫の長髪を後ろに流し、鋭い眼光と整えた髭が相応しい威厳を醸す彼らの王の姿だろう。民の顔に畏怖と、かの王を戴く誇らしげな感情が浮かんだ。
ドミネウス王はゆっくりと腕を開き、どっしりとした声で語り始めた。
「極刑なき慈悲に付け上がる罪人達に害される苦しみを、無辜なる民に強いてしまった。これ以上罪人達を放逐する事は、民を守る王の責務を放棄する事と同義である!」
へっ。お綺麗なこって。窃盗、強姦、殺人、あらゆる罪に手を染めたと言っていたバディントは、嫌味ったらしく吐き捨てた。ぼさぼさと脂っ気のない髪と髭の隙間から、ぎらぎらと欲望に塗れた瞳が国王を睨め付けていた。
「第四十九代エテーネ王国ドミネウスの名において『黄金刑』の復活を宣言する!」
わっと歓声が湧き上がり、ドミネウス王を讃える言葉が口々に上がる。拍手は鳴り止まず、足踏みが地面を揺るがし、口笛が歓喜の音を引き裂いて響く。
じゃらりと後ろ手に手枷を繋いだ鎖が引かれ、現実に引き戻される。耳元に触れた生暖かい吐息は、笑い声を含んでいた。
「最高の眺めじゃないか。なぁ、レナート?」
声の主を確認しようとするが、両腕を引っ張るように鎖を強く引かれ胸が張って振り返れない。だが、女性の声に聞き覚えがあった。ゼフさんの店で再三魔法生物の破棄を迫った、指針監督官ベルマだろう。
恐らく魔法生物の破棄を妨害し、彼女の『時の指針書』の内容を遵守できなかった事を根に持っているのだろう。僕が異形獣を切り倒さなけば彼女こそ死んでいたんだけれど、彼女にとって殉死は望むところだったのかもしれない。
「ドミネウス陛下はどんな無価値なクズであろうと、眩い黄金に相当する価値ある人間に矯正する機会を与えてくださる。貴様には勿体無い御慈悲だ」
愉悦に歪む顔がありありと描けるような、ねっとりとした声。
やはり『黄金刑』は事実上の極刑なのだろう。この黄金の煮え沸る釜に飛び込んだだけで全身大火傷で死にそうだけど、それ以外に絶対に死に至るカラクリが存在するんだ。
背中にちくりとナイフの切っ先が当たる。刺されぬよう自然に足が前に出る中、僕を繋いだ鎖を持ったベルマの声が高らかに響き渡った。
「黄金の釜が汝に更生の輝きを見出したのなら、今一度汝を信じよう!」
しつこくて嫌われちゃう女、ベルマちゃん。
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