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ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 外套の内側の闇が爆ぜた。闇が霧のように広がり、砂塵のように舞う。アーゼが差し出した手に相応しい巨体の黒竜が、目の前に現れたのだ。咆哮が空気を震わせ、獣達は原始の恐怖を呼び起こされて半狂乱になる。逃げる者達で森はざわめき、鳥達は叢雲のように湧き出して空を駆ける。
 私もぶるりと震える。理の外から覗いていて危害など加えられないとわかっているのに、恐ろしさが心を掴んで縛り付ける。
 アーゼと相対する二人は私以上の恐怖に竦んでいるだろう。立ち向かう気力すら刈り取る、暴君としての威圧感が死を予告するように立っている。ファルナンは震える手を、剣を強く握りしめることで、気力を奮い立たせることで止めた。騎士団長として多くの騎士達を導き、希望を示した声が闇の中で光のように響く。
 剣を掲げる姿は、ランフェスバイナの希望と言われる騎士を体現したかのようだった。
「いくぞ、ミアリアーク!」
 ミアリアークも応じて本を開く。大地から突き上げるように鋭い氷の刃を、竜の尾がなぎ払う。砕けた氷に、ファルナンの剣に乗せた光が入り込んで拡散する。ファルナンは剣に乗せた光を竜の長身に負けぬほどに膨らませ、一瞬怯んだ竜を両断した。光と闇は相反する属性。ランフェスバイナの力を授かったファルナンは、いともたやすく竜を切り裂く。
 しかし、手応えはない。
 闇は闇。広がり包み込み、そこに溜まって残り続ける。
 両断した竜の形をした闇は、形を崩し再び凝縮する。再び竜の形を取った闇から、ファルナンは距離を置く。剣を構え目を凝らすファルナンは、ふと一点に目を留めた。闇の中に光るほどに白いものが浮かぶ。小さな人の両手。おそらくも何も、アーゼと融合しているササの手であろう。
『遊ぶと宣言しただけのことはある。あそこまで理性がアーゼを支配しているとはな』
 ファルナンの肩に乗ったランフェスバイナが、忌々しげに言い捨てた。ちろりと舌を出し、闇から出た手へ向けていた視線をファルナンへ向ける。
『お前達は先代のバルダニガの器であるイゼフと戦っていたから、わかるだろう。神の器は神の弱点でもある』
「あぁ。黒竜をいくら攻撃しても埒が明かない。イゼフを止められれば、黒竜も消える。イゼフに物理攻撃を叩き込むのが一番効果的だったな」
 ファルナンとミアリアークが頷いた。
 長年アーゼと戦争状態にあったランフェスバイナにおいて、最前線に立つ竜将軍イゼフをどう止めるかが防衛の要でもあった。融合した深度の問題でイゼフと比べ物にならないが、それでも基本が変わらないことを感じているのだろう。先ほどまでの恐怖は薄らぎ、頼もしい表情の団長と副団長がそこにいる。
『弱点を補う為に、融合状態にあれば器は神の属性に溶け込める。ファルナン。貴様がバルダニガから器を引き摺り出したのが、それだ。闇の中であれば、器は何処にでも存在しどこにも存在しない。勝つ為ならば、普通は器を露呈させぬ』
「アーゼは私達に敢えて弱点を晒しているということなのですね」
 ミアリアークの言葉に答えたのは、アーゼだった。白い手が拍手をし、『そのとおり」と肯定する。
『互いに、きぼうを目指すのは、楽しい。エンタメは力を合わせることで、せいこうする」
 えんため? この世界の言葉なのだろう。神の媒介があっても、いまいち理解ができない。唯一理解できたのだろうファルナンが、額を抑えて項垂れた。
「また変な言葉を教えたのか…いや、伝わってしまったのか…」
『エンタメとはなんだ?』
「獣の神には最も縁遠い言葉ですよ」
 獣の神は愉快そうに笑う。白い手が注意を促すように叩かれる。手がひらりと横へ動くと、バルダニガに似た黒い大型犬が二匹現れる。獣の形をした闇を頭をぽんぽんと叩くと、優雅な動きでファルナンとミアリアークへ手を差し向けた。
 獣達が飛び出す。人の動きを凌駕する、獲物を駆る野生の動き。まるで引き絞り放たれた矢のように、闇は一直線にファルナンとミアリアークの喉笛を目指す。剣を構えたファルナンから一歩下がったミアリアークが、叫んだ。
「ファルナン。私に考えがある。奴らを頼むわ!」
「わかった!」
 応じるや否や、ファルナンは自身に襲い掛かった獣を一刀のもとに切り捨てた。ミアリアークに迫る獣を、ランフェスバイナの力で貫く。形を崩しても消えない獣がファルナンの方へ向き直り襲い掛かる! 黒い闇から迸る敵意を、銀の小手で食い止め差し込んだ剣から光を放って霧散させる。闇は崩れてさらに小さな動物になり、小さな動物同士がくっつけば大きくなる。目まぐるしく変化する攻撃手段に、ランフェスバイナの力で一撃で潰せるとはいえファルナンは守りに徹せざる得ない。
 ミアリアークはその間に魔法を放つ。彼女の周りに浮かんだ雹を、次々とアーゼに向けて放つ。闇の竜が軽々と払った雹は足元に白く厚く積み上がる。無駄な行動だと思った次の瞬間、雹は溶けて水になり、浮き上がった! 粒は瞬く間に触れて大きくなり、一抱えもある水の塊が手の上の闇に沈み込む。
 白い手が慌てたように動いた。肉体は融合していても、生命活動として必要な最低限は必要とさてれいる。水で顔を覆われては溺れかねないのだ。
「ファルナン!」
 ファルナンが駆け出し、光を帯びた剣を闇に刺し入れる。光が水に触れたのだろう。水は光を拡散し、闇の中で虹を伴って爆ぜた。
『!」
 闇が晴れる。闇から切り離された器は、苦しげに水の中から逃れようともがいていた。 ササは膝をつき、ごぼりと口からたくさんの泡が溢れ出る。そんなササをファルナンが支えた。
「ミアリアーク止めろ! 溺れてしまうぞ!」
 今だ。ありがとう、ミアリアーク。今ならば、確実だ。
 私はひらりと理を超えた。世界を跨ぎ、ササとファルナンを見下ろす空中に飛び出した。
 冷たい空気が体を包む。ミアリアークの雹を生み出した為の冷気かと思ったが、違う。水の中からのササと目が合った。こちらを見ている。私が放った力を、瞬く間にササを取り巻いたアーゼの力が相殺する。
 これほど完璧な不意打ちを防いでみせるのか!
「ニア!」
 ミアリアークの声が聞こえる。獣の神の器が激しく咳き込む声が聞こえる。外れない視線と、私を見た複数の目。
「猫? こいつがランフェスバイナを滅ぼしたのか…!」
 不意打ちは失敗したが、それでも勝機はある。ここに集まった彼らを蹴散らすだけの力が、私にはあった。この世界の理よりもずっと強い理で構成された世界で生きてきた私にとって、この世界の魔法はママゴトだった。
 獣の神の器が立ち上がって、ミアリアークとファルナンの前に立った。ぽたぽたと顔から水が滴って、地面に落ちる。
『今のこうげきで分かった。ニア。きみはつよい。きっと、この世界の、だれよりも」
 闇が太陽を覆い、闇が迫る。傍にアーゼが私を品定めするように見ている気配がする。もう、アーゼの胃袋の中にいるような気分だった。それでも、私はその腹を食い破り逃げ出す自信があった。
 ササの姿をしている獣の神は笑っていた。
『でも、俺達はみんな負けるのが大嫌いだ。…君に勝つ為に、『私』は全ての知識と力を合わせなくてはならないようだ」
 言葉が変わる。舌っ足らずな子供っぽい口調ではない。厳格な賢者の風格を感じる、大人びた識者の言葉選び。
 しまった。私は身がすくむ。
 今、アーゼを構成する全てが一つの意思のもとに統一された。
 私に勝つ。
 その一つの目的のために、アーゼとバルダニガとササの意識が完全に統合されたのだ。目の前にいるのは獣の神と融合した器ではない。獣の神そのものだ。
『はじめまして、賢く強い理の外の者。私はアーゼ。君を殺さんとする者だ」
 私はとっさに力を振るう。ランフェスバイナを消滅させた力が、目の前の全てを薙ぎ払うはずだった。しかし、力は全て闇が飲み込む。底の見えない滑る闇から、穏やかな白い顔が私を覗き込み、冷たい手が私の頬に触れた。触れ方が分からないと一切触ってこなかったササの、初めての手の感触だった。
『さぁ」
 睫毛が触れ合うほど近くに目がある。視界をアーゼの目が覆いかぶさってくる。くろい、黒い、闇を固めたような黒目。そこに私は映っていない。白い猫の姿のニアも、美しい空色の青い瞳も、吸い込んでなお暗い闇が私の目を覗き込んだ。
『賢き子。君の心の闇が吹き出す。己の願望と現実に潰されてしまえ」


エンタメを語り出す獣の神。なんで変な言葉ばかり覚えるんだろう。
実際にハンデを与えてきたのは、単純にゲームにはルールが必要で、互いに勝つ見込みがあったほうが楽しめると思っているアーゼを構築する連中の総意です。

あ、分割数確定です。4分割です(白目) 本当は今回のを2分割して全5分割予定でした。
お気づきでしょうが、今までは、きちんと一話分書き終わってました。今回は今書き終わりました。首の皮がつながりました。
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