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ハコの厚みはここ次第!
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□ Profile □
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 流石は金持ちだけが住む事を許されるレンダーヒルズ。地上げで手に入れた家財一式は、どれもこれも一目見ただけで高いとわかるものばかりだ。薄暗い蔵が押し込まれた金銀財宝に明るいくらいだ。
 しっかし、最後に入れたお宝だけはパッとしねぇ。確かに綺麗で立派だとは思う。だが、金銀財宝みたいに派手で、見ているだけで気持ちよくなるものじゃねぇ。
 それはオーガ二人でようやく持ち上がるほど巨大な、グランドピアノというものだ。黒い塗装は鏡みたいに俺を写しているし、形も存在感も決して安っぽくなんかねぇ。鍵盤という白と黒い板が並んでいる所を押すと、音が出る。俺には到底縁のねぇ、楽器というやつだ。ウェディなら少しは馴染みがあんだろうけど、こちとら、腕っ節に物を言わせ、肉と女にしか興味のねぇオーガだ。そんな崇高なご趣味はございませんってなぁ。
「全てさがったか?」
 すっと気配も足音もなく入ってきたのは、この組の長、ツバクロの兄貴だ。背が小さくて、童顔で、エルフだから筋肉質でもない。それでも、攻撃は全くあたらねぇし、ちょっと腕を持たれたら最後、どんな巨体も投げ伏しちまうんだからとんでもねぇ。
 『これで全部です』とデュバルが言えば、兄貴は『そうか』と頷いた。
 そうして一番手前にあったグランドピアノに掛けられた布を外し、鍵盤の蓋を開ける。兄貴は楽器でも嗜む趣味を持っていただろうか? 俺とデュバルが顔を見合す前で、兄貴は鍵盤を一つ押した。ぽろんと音が一つ転がる。俺にはこんな音を出す、こんなデカい楽器に何の価値があるのだろうと熟思う。持ち主だったウェディの小娘が、ババアと練習した思い出の品だって顔真っ赤にして泣いていたな。でも、思い出なんざ金にはならねぇ。俺の夕飯代よりも安いんじゃないだろうか?
「いけんな」
 ぽつりと兄貴が言えば、振り返りスタスタと蔵を出て行く。
「ちと、文を書いてくでのぉ、ピアノにはかもうな」
 兄貴のエルトナ訛りは、時々キツすぎて何を言っているかわからねぇ。デュバルに顔を向ければ『ま、ピアノを持ってけって言ってるわけじゃねぇから、置いとけって意味じゃねぇの?』っていうし、俺もそう思う。足早に去って行く兄貴の背が、いつもと違う気がした。

 兄貴が文をどこぞへ出してから数日後、俺はデュバルとグランドピアノを持って木工ギルドへやってきた。ピアノの下にぎっしりとスライムゼリーを入れた袋を敷き詰めているのは、『ピアノに振動を与えないため』らしい。俺にはよくわからないが、兄貴がそうしろと言うのだ。
 そうしてやってきた木工ギルドは、相変わらず木屑だらけで貧相でしみったれた場所だと熟思う。
 俺達を見てキハダがげっと声を漏らした。久々に会うんだ、ちょっと遊んでやらねぇとな。ぐるっと細っこい肩に腕を回して、にっこりと笑ってやる。ビビってやがる。へへ、可愛らしいねぇ。
「よう、キハダさん。元気でやってるか?」
「カンナさんが言った大口の客って、あ、あんた達のことかよ!? 何しにきたんだ?」
「さぁ。俺達はツバクロの兄貴に頼まれて、荷物を運んだだけだ」
 グランドピアノを覆っていた布が取り払われる。現れたピアノにキハダが『綺麗だなぁ』と声を漏らした。綺麗。まぁ、汚くはねぇ。だが、綺麗っていうと、俺的にはキラキラしてる物の方がしっくりくる。
 ギルドマスターの小娘がグランドピアノを見て、徐に鍵盤を弾く。ぽーんと音がギルドの中に響いた。
「へぇ。木が過剰に湿気を吸ってだいぶ傷んでるねぇ」
「流石、お嬢。一つ音を弾いただけで分かりおりましたか。スミツボのオヤジさんが、草葉の陰で喜んどりましょう」
 俺がキハダを見下ろすと、キハダは小さく首を振った。
「お、俺が分かる訳ないだろ。大事に使われてて、外からの見た目じゃ痛みが分からないよ。そ、それにしてもアンタの所の親分が依頼主なの? あのピアノが傷んでるって、あの親分さんが見抜いたの?」
「あの小娘みたいに一回音だしたら、手紙書きに行ったんだからそうじゃねぇの?」
 俺の言葉を聞いたのか、小娘は嬉しそうに兄貴に笑いかけた。
「へぇ、ツバクロ。アンタの目は、まだまだ濁っちゃいないみたいだね。今から職人に戻らない?」
「勿体無いお言葉ですな、お嬢。持ち主がウェディで長年使っていると知れば、分かるもんでしょうよ」
 俺がキハダを見下ろすと、キハダはぶんぶんと首を振った。ピアノの天板を開け、底を覗き込だりしている小娘に兄貴は言う。
「一週間後にウェナから、調律師がここに来ます。時間が掛かるなら、もうちと遅くできますが、いかがしましょう?」
「ちょうど良いくらいだよ」
「前金は50万、調律終了後に残り50万、振り込ませてもらいます。引き取りはリーネという娘の使いが来るじゃろうて、よろしゅうお願いします」
 へ。俺は目を丸くする。こんな古臭いピアノとか言う楽器に、100万ゴールドも使う価値があるのだろうか? っていうか、それ、金にしないの?
「ツバクロ。アンタが取りに来ないの?」
「ワシはちと預かっとるだけなもんでしてね」
 娘が『ふーん』と兄貴を見て笑っている。そんな小娘の顔を見て、ツバクロの兄貴は肩を竦めた。
「お嬢。そがな苛めんでください」
 時々、兄貴の金の使い方が分からねぇ時がある。こっちが損してるだろうに、なんで、皆、嬉しそうなんだろう? 俺には分かりそうもねぇな。


広島弁!!!!!!!!!
わかんない!!!!!!!

とはいえ、ツバクロさんはテキスト量がそんな多くないので、っぽくまでしかいけませんね。しかも、彼の場合、広島弁をスパイス程度に入れてる感じなのでさらに難しい。
筋を通せば分かる人なので、ちょっと良い人の時もあります。それがいい。
カンナさんの母親と馴染み深い人ですが、カンナさんには無一文で拾われて…とか扱き下ろされてかわいそうです。彼が職人を辞めて堅気の道から堕ちた理由を考えるだけで、一万文字は軽いですね。はーー。棟梁の娘に恋い焦がれて、でも腕前はそれほどでもなくて、やさぐれちゃったらどうしよう!青春だね!

拍手に感謝!ぱちぱちっとありがとうございます!
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