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ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 闇。見渡す限りの闇。誰もいない。ファルナンも、ミアリアークも、ササの姿をした獣の神も、光る蜥蜴の姿のランフェスバイナもいない。
 どうしようもない不安が、体の奥底から吹き出してくる。この感覚を知っている。私が生まれて間もない頃、これからどうなるのか分からなかった時の気持ちだ。小さい女の子が泣いている。決まった未来から逃れられない不幸に、泣くことしか出来なかった私がいる。
 いやだ。いやだよ。どうして、どうしてわたしなの?
 わかる。わかるよ。どうして、私だったのだろう? 疑問をいくら呟いても、誰もわかってはくれなかった。誰も分かろうとしてくれなかった。全て薄い硝子のような隔ての向こう側にいて、隔てられたそれを破ることはできなかった。その向こうは目まぐるしく変わる。人は入れ替わり立ち替わり、違う人がそこにいた。誰も、私に寄り添ってくれなかった。
 どうして、私なのだろうな? 意味があるのかもしれない。
 隔ての向こうの竜を見つけた時、私と同じだと思った。賢い彼は獣の神に言葉を教えた。しかし、次第に闇の意識に侵食され、狂う前に頼んだ親族の手で葬られた。可哀想だと思った。私と同じなのに私よりも可哀想だと思った。
 どうして、俺を選んだんだい? 何かの縁だし、一緒に考えようぜ。
 竜の姿ではないが同じ魂だと分かった。飄々として楽しげに闇に語りかけて、隣を歩かせた。それでも闇に近づきすぎて、闇に深入りしすぎて、魂は闇に呑まれてしまった。光り輝く騎士が魔王を討伐しましたと、私に報告した。私は泣いた。だって、私と同じなのに、どうして殺されてしまったんだろう。私も殺されてしまうのだと恐ろしかった。
 どうして、俺に頼むんだよ? しょうがないなぁ。俺もアーゼが滅ぶの嫌だし、頑張るよ。
 次に私の前に現れた魂は、私を殺そうとしていた。どうしてそんな事をするの? 貴方は私と同じなのに。それでも、心のどこかでは、彼が苦しんでいるのを喜んでいた。彼も私と同じ。彼が人を殺すのが嫌だと、私の国を滅ぼすのを嫌だと、どんなに叫んでも聞き入れてくれないのに苦しんでいた。
 愛おしかった。私と同じ苦しみを持つ、私と同じ存在が、特別で、とても愛おしかった。話したことのない魂と、苦しみを分かち合っている気がしていた。
 いつの間にか魂が増えている。隔ての向こうで、同じ魂が並んでいる。
 どうして、私の所にきたんですか? あぁ、もう。戦争なんて、人を傷つけるなんて、したくないです。
 愛おしい魂と同じなのに、私と同じなのに、苦しんでいなかった。二つの魂は寄り添って手を取りあって、私の目に見える所から遠ざかっていこうとする。嬉しそうに、苦しみから解き放たれて去っていってしまう。
 待って。行かないで。縋ろうとしても隔てが遮る。
 嫌だ! 嫌だよ! おねがい、行かないで! 私を一人にしないで!
 気がついた時には隔ては消えて、私は一人だった。一人で生きてきた。魔力に優れていた私は、多くの他人に囲まれて生きてきた。私を利用する人、私を消そうとする人、私を恐れて近づかない人。私を理解してくれる人はいなかった。いたのかもしれない。でも、私は誰にも寄り添ってもらったことがなかったから、理解してもらったことがなかったから、分からなかった。
 皆、私を恐れていた。気に入らないものを消してしまう気まぐれな空の悪魔。そう呼ばれた。気にならなかった。私は隔ての向こうへの憎しみと、あの魂が欲しかったことしか心に残っていなかった。
 私と同じ、私と同じ苦しみを知っていた、あの魂が欲しかった。
 目の前にいるのに、触れてすらいるのに、体が痛い。痛くていたくてイタクテ、体が崩れていく。この世界とは異なる理で出来た器が崩れていく。あの世界では猫と呼ばれた形が保てなくなる。いたい。いたい。痛い。心が暴れて、焦がれる想いと成し遂げられない現実が体をすり潰す。
 いやだ。いやだ。思い出す。長い間この世界で生きてきた、名前が、姿が、生まれ変わった私を否定する。
 私はニアなの。自由になった。なんでも好きに決められて、どこへでも行ける。この世界を壊したいと思えば、壊せる。だから、目の前の魂も欲しいと思うから手に入れられるんだ…!
 私は何も出来ない、シルフィニアじゃない!
『あ」
 驚くような声が聞こえた。闇が晴れて体を貫く痛みが、意識を鮮明にしてくれる。
 ササが驚いたような顔で私を見ていた。茶色掛かる黒い瞳は困惑の色を浮かべながら、私の大嫌いな完璧な少女の姿を映していた。私はなんて幸運なんだろう。なんて彼女は不運だったんだろう。彼女が私を覚えていなければ、私の姿がシルフィニアの形になるのが少しでも遅ければ、アーゼは私を殺せたはずなのに。
 私はササの外套の襟首を掴んだ。鼻が触れ合うほどに顔を近づけると、黒い瞳に青い色が映り込む。
「ありがとう、私を覚えていてくれて」
 ササが崩れ落ちる。視覚に直接魔力を流し込まれると、視覚による認識に頼る生き物は拒むことが出来ない。力なく私にもたれかかった重い体を抱きとめた。
「シ、シルフィニア様!?」
「ニアよ」
 振り返る。生まれ変わって百年ほど離れていた感覚だったのに、驚くほどしっくりするシルフィニアの肉体。背丈も力加減も視線の高さも、私がニアではなくシルフィニアだと嘲笑うようだった。ファルナンもミアリアークも変わらないのも、腹立たしかった。ランフェスバイナは面白い形になっていて、見ていて愉快になる。
「私は一度死んで、自由を手に入れたの」
 気を失ったササの背に手を当てる。力を流し込むと、ササの体が淡く光り、すっと光が彼女の体から離れた。淡く温かい光を放つ塊。獣の神の器の魂だ。ニアの姿を構築し、ふわりと魂に寄り添って浮かびあがる。私が求めたものは、温かい気がした。
「ずっと、ずっと、欲しかったの」
 私は魂を抱きしめ、世界を跨いだ。
 もう、この世界には用は無い。あとは、消え去るだけなのだから。


ニアの正体はシルフィニアちゃんでした!!!!!
ダルフ防衛戦の時にニアと邂逅したときに浮かんだ続編でした。
もう佳境になってきたので、終わった後の全体修正を視野に入れ始めているのですが、このニアがシルフィニアだったという設定がいかにしてバレない程度に事前に明かすかが薄いのでそこをテテラの話と差し替えで加えようかとか思っています。一番最初はニアには弟子というか手下みたいな子がいて、ミアリアークの代わりに世界を奔走するついでにニアの設定も明かしていくつもりだったのですが没にしたんですよね。登場人物は少数精鋭に限ります。

遊びのつもりだったから弱点前面に出して手加減してたと思うけど、ササの本気はそんな強くなかったですな。やっぱりファルナンがランフェスバイナの力を授かったのが大きいですね。強い。
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