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ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 砂漠の土竜が連行されていく慌ただしさが落ち着いてから、余達はこっそりとピラミッドを後にした。待っている間に手紙をしたためておったガノは、蜜蝋の封を施した便箋に『グランゼドーラ城・賢者 ルシェンダ殿』と書いて荷物の中にしまった。
「さて、これを郵便局員に出せば、我輩の役目は終わりじゃ」
「ガノは、賊の言葉を信じるのか?」
 夜は更け、星空の光を砂漠は吸い込み銀色に輝いている。余が操縦する『天翔るアストルティアの未来号』は、銀の海を渡る小舟のように進んでいく。
「信じる信じないの判断は、我輩にはできぬ。我輩は王家の墓を荒らした犯人を特定し、その犯人はそう言ったという結果を書いたに過ぎぬ。この手紙と、墓荒らしの証言をどう受け止め判断するかは、グランゼドーラが行うじゃろう」
 デザートランナーよりも少し早い速度で進む『天翔るアストルティアの未来号』は、冷え始めた砂漠の空気を割って進む。風圧は疲れた体に重く響いたが、冷たくて心地よかった。
「ガノは、余の言葉を信じてくれたな」
 余は操縦桿をきつく握る。『この子は貴方と一緒が良いと言っている』そう、メンメ殿に託されたドルボードのオリジナル『天翔るアストルティアの未来号』。そうしてくれたのは、余が、ガテリア皇国の皇子だからではなかった。
「余はガテリア皇国 第一皇子、ビャン・ダオ」
 ガテリア皇国。余は故郷の敵国であるウルベア地下帝国によって、処刑される寸前であった。リウ老師の機転で救われた余は、今、3000年という未来の世界を生きている。
 この時代の者達で、余の故郷を知る者は殆どおるまい。皇子を名乗る余を、否定もしくは懐疑的に思う者ばかりだ。仕方がない。故郷が失われたのは3000年も昔のことだという。誰も信じなどしない。余も、同じ立場なら信じたりせぬだろう。
 今の余は、ただのビャン・ダオ。それを、世界を知れば知るほどに思い知らされる。かつての文明の栄華がカケラ一つ残らなかったのは、ガテリア皇国とウルベア地下帝国を奸計によって破壊へと導いたグルヤンラシュのせいであろう。
 それでも立ち、歩き続けられるのは、リウ老師とガノの教えがあるからだ。
 ガノと歩き踏みしめたドワチャッカ大陸の日々。あの日々は余に歩く体力だけではなく、歩いた先に何かがあるという事を教えてくれた。リウ老師は死を決意した余に生きよと言った。不思議な事に二人が余に伝えたことは、同じであった。
 それでも、自分の存在が懐疑的に扱われるのは辛い。今まで皇子として生きてきた。その寄る辺が否定され、足元が失せる不安がある。落ちる。あの落下の恐怖は、余が怯えるものと同じ事なのであろう。
「ガノ。なぜ、信じてくれるのだ? 余が、ガテリアの皇子であると…」
 操縦桿を握る手が白くなる。ごうごうと過ぎ去る風の音だけが、耳を叩き、心臓の音をかき消してくれる。それでも心の臓が肥大して胸が爆ぜると錯覚するほどに、胸が苦しい。あぁ、どうか、否定してくれるな。そう願う余がいる。
「最果ての地下遺跡はな…」
 ガノの声が低く重く、『天翔るアストルティアの未来号』から這い上がるように伝わってくる。
「ドワチャッカ大陸では忘れられた地じゃ。今、ドワチャッカ大陸で暮らす者で、かの遺跡を知る者が何人おろう。ボロヌス溶岩流は生命を寄せ付けず、旅人が寄る理由もない。誰も訪れぬ。誰も知らぬ。じゃが、お主だけは訪れたことがあった。お主だけは知っておった。かつてガテリア皇国と呼ばれていたかつての姿を、最果ての地下遺跡の中に見ておった」
 余がこの人生の終わりの場に選んだ場所。訪れた時、余は死ぬ事を決めた。滅んだ故郷。親しい者は誰一人おらぬ。全て、遥かなる時間の中に消えてしまった。悲しいほどの理解は、絶望へと変わる事は必然であった。
「懐かしむ眼差し。廃墟の向こう側を、過去の栄光を覗き込んだ瞳。そして今の姿を認識してしまう悲しみと辛さ。それを、どうして否定できよう」
 二人乗れば狭い。余の足にはガノの背の温もりがあった。
「胸を張れ。ビャン・ダオ。お主がガテリアの皇子である事を、我輩は決して疑わぬ」
 星の輝きが膨らみ、感謝の念が押し寄せてくる。どう言えば、この感謝の念が伝えられるのか、余には分からなかった。

あ。こんな終わりになることは想定してなかった。
最初と最後が繋がるとは思わなかった。ま、いっか!
個人的にビャン君は『動き出した時間』よりも『砂上の魔神帝国』の方が口調が若々しいんですよね。きっと旅をして、現代のアストルティアに馴染んだのでしょう。あと、ガノとコンビを組む機会が増えるので「じゃ」って語尾は色々と困る。若々しいビャン君をイメージして「じゃ」は無い方向で書いています。
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