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ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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『なにそれ、ふーふげんかって奴なの? ササが俺ですら食わないって言った奴だよね。食べ物じゃないじゃん!』
 俺とミアリアークの間に闇が湧いた。大型の黒犬が不満そうに座っていて、か細く佐々木の声が聞こえる。
「そんな絶賛炎上中の場所に、どうして顔出しちゃうんですか。帰りましょう」
「帰るな!」
 バルダニガの中に手を突っ込むと、虚無の闇の中で布の質感を捕らえる。力いっぱい握り込んで、全力で引っ張るとバルダニガの中から佐々木が引き摺り出された。お前は神をどこでも扉みたいに瞬間移動の道具として使えるのか。便利だな!
 変な声を上げて俺の前に転がった佐々木を指差し、ミアリアークに言い放つ。
「ミアリアーク、佐々木さんと戦う理由を話すんだ。彼女には、知る権利がある!」
 黒い外套越しでも佐々木がびっくりしたのが伝わってくる。バルダニガに覆いかぶさられて、俺にフードを掴まれて、佐々木は起き上がることもできず、もだもだともがいている。
「え? 私、ミアリアークさんと戦うんですか? どこでそんな話になったんです? んんっ! バルダニガ重い、どいて!」
 いやいやと戯れつくバルダニガをどうにか退かし、佐々木はよぼよぼと立ち上がる。
「はじめまして、ササ。私はミアリアーク」
 ミアリアークが佐々木に笑いかける。初めての相手に向けるような作り物の笑顔ではない。家族に向けるような、友人に向けるような、親愛を感じる暖かい笑顔だ。ミアリアークの氷のような美貌が溶けて、慈愛の温かみが伝わってくる。
 佐々木はその顔を見て、なぜか驚きに身を固くした。ぎこちなくおずおずと頭を下げる。
「…あ。はい。ササです。はじめまし…て?」
 最後がなぜ疑問形になるのだろう? 佐々木の挨拶が帰ってきて、ミアリアークは表情を引き締めた。
「私はニアという世界の脅威に、貴女とバルダニガが融合した状態で戦うよう求められました。ぜひ、私と戦ってください」
 バルダニガがミアリアークに歩み寄り、品定めするように見上げる。ミアリアークが真剣であるのを感じ取っているのか、冗談に受け取るような真似はしない。
『ねぇ、ミアリアーク。俺とササが融合した状態って、すっごく強いよ。大丈夫なの?』
「問題ありません」
 ふぅん。バルダニガはこれ以上聞くことはないらしく、佐々木に振り返った。
 佐々木はと言うと、口元に手を当て真剣な顔で考え込んでいる。メガネの奥の瞳はミアリアークを見ているようで、見ていない。その奥の更に向こう側にいるだろうニアを見ているような、全てを見ようと研ぎ澄ました光が点っている。
 しばらく考え込んでいた佐々木は、ゆっくりと手を下ろした。そして小さく頷く。
「わかりました。貴女が望む通り、バルダニガと融合して戦いましょう」
「佐々木さん!?」
 俺は叫び声に似た声を上げて、宿敵の来世を見下ろした。
「敵の罠の可能性が高いんだぞ! どうして応じるんだ!」
 佐々木は先ほどの真剣な表情を崩し、へらりと笑った。
「彼女には彼女の考えがある。その考えはこの世界のため、そして私のことも含めてくれていると感じました。信じましょうよ。ミアリアークさんの望む未来を…ね」
 佐々木がミアリアークを見て微笑むと、ミアリアークは恍惚に似た顔で佐々木に笑い返した。どうして、そんな顔するんだ。俺にそんな顔、見せたことないじゃないか! あぁ、こんな場面で嫉妬心が胸をかき乱すだなんて…!
「私は勝った方が良いですか? それとも、負けた方が良いですか?」
「勝ってください。絶対に」
 ミアリアークの言葉に佐々木は頷いた。眼鏡を外し覚悟を決めた笑みは、俺達にはとても馴染みのあるもの。竜将軍として立ち塞がるイゼフの、悠然とした笑みだった。全ての希望を一切合切なぎ払い、敵を絶望に叩き落とす魔王の化身の笑み。
 俺はファルナンとして初めてイゼフに遭遇した時のことを思い出す。
 黒竜を駆り戦場を圧倒するその様は、正直、かっこよかった。敵として震え上がるほど恐ろしい存在だったからこそ、手の届かない憧れのようなものを抱かせる。
「貴女が私に勝てるかも知れないなんて不安を、一切抱かせることはありません。安心して全力で、本気の私から生き延びてください」
 ミアリアークの笑み、美亜の信頼、バルダニガの器としての力、どれもこれも持っている佐々木が悔しいほどに羨ましい。
「あ、でも今は夜だから明日にしましょうね」
 そう眼鏡をかけ直した佐々木は、やはり敵であって欲しい。


さすが佐々木。締まらない。
本当は夜間の方が闇属性であるバルダニガが圧倒的に有利なんですが、夜は寝る時間という模範的考えの佐々木の手にかかると有利とか関係なくなる。みんな起きちゃうから、明日にしましょうってな。
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