ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 男性監督官二人に抑え込まれ、シャンテはベルマの前に膝をつかされていた。ベルマは取り巻きの一人に顎をしゃくって見せると、仮面をつけて窺い知れぬ顔がシャンテの後頭部へ向く。美しい黒髪の長髪を引っ張られたシャンテが、苦しいうめき声を上げて顔をのけぞらせた。
 黒い制服のせいで死人のように青白い指が、シャンテの首に伸びる。やめて、触らないで! と、シャンテが拒絶を叫び、髪を掴まれたままに首を激しく振った。
「そこには大きな傷跡があるから、絶対に見ちゃ駄目だって姉さんが!」
 あぁ、かわいそうに。ベルマが甘ったるい声を囁き、シャンテの頬を慈しむように撫でた。シャンテの瞳を覗き込んでいた視線が、あたしに向けられてはっきりと愉悦に歪む。
「そう、ご主人様に躾けられている事すら分からぬとはな。お前達が『家族』と呼ぶ魔法生物以下の扱いを、お前は受けているのだよっ!」
 強い語気の勢いと共に、シャンテの首元からチョーカーが毟り取られた。
 コーラルピンクと可愛らしいレースのフリルのチョーカーが、吹き込んだ潮風に飛ばされる。目の前に落ちて水を吸い込んで色が変わるチョーカーから、のろのろと視線を上げた。
 狂った笑い声が爆発した。
 目を大きく開けて、呆然と首に触れるシャンテがあたしを見ている。
 滑らかな真っ白い首元には、大災害で受けたという大きな傷跡など一つもない。
 喉仏の位置に、丸く磨かれた宝石が埋まっている。人間には絶対あり得ない、肌とは違う冷たく滑らかな石の感触。魔法人形の証である真紅の宝石を、健康的な肌色の指先が信じられないように何度も撫でていく。
 全てを理解したように、シャンテの瞳から涙が溢れた。
 シャンテの顔がぐらりと揺れる。ベルマの取り巻きの男性監督官達が、シャンテを檻の中に投げ込んだのだ。駆け寄った目の前で、乱暴に檻が閉じられる。ぐったりと項垂れるシャンテを労わるように取り囲んだ家族を、ベルマは穢らわしい物を見るように一瞥した。
「あぁ、執着もするはずだ。人間型の魔法生物は、現代の技術でも実現できていない。未発表のまま闇の葬られては、お前の功績は評価されないものなぁ」
 軍帽の下の表情が喜びを滲ませて、形の良い唇が甘い声を紡ぐ。
「錬金術師リンカ。人間型の魔法生物の発表の場を、用意してやろう。栄光ある第一号であるこの魔法生物は、王立アルケミアでさらなる研究の礎になる。功績が評価されれば『王立アルケミアの研究員の申し出を受けるべし』と、指針書に書き込まれるだろう」
 良かったなぁ! ベルマは歓声をシャンテに向けた。
「錬金術師にとって、魔法生物とは便利な道具。魔法生物たるお前も、ご主人様の栄光の助けになれて嬉しいだろう!」
「道具じゃない。あたしの大切な家族だ!」
 叫びながら振り抜いた拳は、殴りかかるのを予想して一歩下がった顔に届かなかった。ベルマの幼さすら感じさせる顔から拭ったように喜びは消え、蔑みの色が覆っていた。
 こんな奴にシャンテを絶対に渡さない。
 体の隅々まで調べ尽くされ、様々な実験は苦痛が伴うかもしれない。用が済めば機能停止されて未来永劫展示される。そんな未来にシャンテを送り出せるものか! 大事な家族を踏み台にして手に入れる栄光なんて、クソ喰らえだ!
「その子も、シャンテも、あたしの大切な妹だ!!」

存分に神経逆撫でしてくれるベルマ嬢。輝いてんなぁって思ってる。

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