ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 ララリア様に先立たれた事で、ゾルトグリン様は己の命が有限である事を強く意識しておいでだった。ドランドの肥沃な大地と潤沢な清き水を息子達に与えてやりたい一心で、ご自身のご健康を損なう事も厭わない。ララリア様にご家族を託された身として、寝食を整えることは国政よりも難しかったかもしれない。
 お休みください。立派な体躯をがらんとしてしまった寝所に押し込みながら、寝酒に付き合う日々が続いていた。
『ギルガランは我の理想を体現した、芯のある強きオーガとなった』
 程よく酒が入って語られるゾルトグリン様のお言葉は、ララリア様を失ってから常に同じ。
『長くは生きられないと言われたグリエの慈しむ心根、優しい眼差しはララリアによく似ている』
 決して息子達に向けて伝える事はない愛情を、王は語る。
 ギルガラン様が強く逞しい、まさにオルセコの戦士達を束ねるに相応しい才能を表している事を上機嫌に褒め称える。己の身長と並ぶのはいつだ、初陣を飾るべき相手は誰となるであろうか。ララリア様のような優しい娘か、それとも同じ戦場を肩を並べて駆け巡る雄々しい娘を娶るのか。孫の話にまで話題が及べば、厳しい王の顔ではなくでれでれと溶けた祖父の顔になっているんだから、墓まで持っていかなきゃならない話題が雪だるま式に増えてしまうんだよ。
 上機嫌で酔い潰れて眠れる日もあれば、鬱々とした日だってある。
『グリエは我が行いを許すと言い、王族の一人として立派に国を支えるまでになった』
 実はグリエ様は一時期養子に出されている。
 稀に虚弱な子供が産まれるが、その一人がグリエ様だった。産まれて一年の間に、小さい棺桶をいくつ拵えたろう。ララリア様がガズバラン様に祈り、ゾルトグリン様はランドンの頂上に登って願掛けまでした。一歳を迎え命は儚くなる心配はなくなったけれど、それでも、病気がちな体に力がつく事はなかった。
 弱き者はオーガ族にとって恥。
 オルセコの王子であれば、いっそ病気を拗らして亡くなってくれた方が都合が良いくらいだ。ララリア様の懇願で死を免れたが、口堅い縁者の元へ預けられ一生戻ってこない筈だった。
 グリエ様は聡明な若者に成長された。
 歴代武人を輩出してきたオルセコ王国故に使える魔法は中級程度だが、虚弱な子供は冷遇され死ぬ可能性が高いオーガ族にとって魔法が使えるというのは一つの強みだ。ララリア様の優しさを受け継いて民の心に寄り添い、その知恵で問題を解決していく。
 ゾルトグリン様は戻ってきたグリエ様の成長ぶりに、強い感動と後悔を抱えていた。息子の目の前の人を慈しむ眼差しと、困った人々に向き合う真摯な態度にララリア様を重ねていたと思う。今の戦乱の時代でなければ、王として求められる全てをグリエ様は備えていたんだ。
 本当にグリエ様はできたお方だよ。親から捨てられたって恨んだって良いってのに、家族を甲斐甲斐しく支えてさぁ。慈悲深いエルフの種族神様が、自分の子をオーガ族の娘の腹に間違って入れちまったんじゃないかねぇ。
 かつてのアタイは、ゾルトグリン様に強く進言した。
 グリエ様をアタイの後継者として育て上げ、ギルガラン様と手を携えれば、オルセコは更なる繁栄が約束されるだろう…と。その言葉はゾルトグリン様の心中を声にしたようだった。
 どれだけ度の強い酒を煽ろうと、その一言を言う時は酔いを一欠片も見せなかった。強い決意を秘めた瞳で、射抜くようにアタイを見て言うんだ。
『我は息子らに、平和を遺したい』

ゾルトグリン王のオーガ味が溢れる手記の内容を、がつがつに掘り下げております。

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