ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 転送の門の安全が確保される少し前、ファラスのあんちゃんが硬い表情でオイラ達に言った。
『パドレア邸に同行してはくれまいか?』
 エテーネ王国の上にぷかぷか浮いてる浮島は、王国の大事な施設や王族のお家が建っているらしい。その一つであるパドレア邸はファラスのあんちゃんのご主人様である王様の弟のお屋敷で、ご主人様の奥さんと赤ちゃんが住んでいるんだって。あんちゃんが行きたがってた目的地だよね。
 どうして、一緒に来て欲しいんだろう? 首を傾げるオイラの横で相棒が口を開く。
『異形獣の襲撃があると、予想しているんですね?』
 あんちゃんが苦しげに頷いた。
『異形獣は時渡りの力を集める為に造られた魔法生物だと、王立アルケミアの資料から判明した。ならば、時渡りの力が強い者が標的にされると考えられる』
 エテーネ王国の人達が持ってる時渡りの力だけれど、王族に近い程、力が強いらしい。
『我が主パドレ様は現存する王族では最も強い時渡りの力を擁しておられた。奥方のマローネ様の力量は不明だが、御子息は父親である主の力を引き継ぎ、強い時渡りの力を持っているだろう』
『そこまで分かってんなら、王国軍に頼んで護衛を付けてもらえばいーじゃん』
 ファラスのあんちゃんが頭振った。後ろに流した砂色の髪が、さらさらと首筋を撫でる。太くて逞しい腕を緩く組んで、オイラ達に説明するように話し始めた。
 浮島への移動手段である転送の門は、強固な城壁でもある。結界が張られている為に飛行物体は入れず、地上と接していない為に侵入する方法は転送の門しかない。だからこそ、浮島の入り口となる地上の軍部区画では、転送の門の使用者に対し厳しい申請と審査が求められている。
 転送の門を使って浮島に上がれる者達は、一部の罪人を除いて身の清い者達ばかりだ。厳密な体制から、浮島には基本護衛となる軍人は配置されない。
『異形獣の被害が国内に広がりつつある今、護衛の申請は受理されるだろう』
 しかし。ファラスのあんちゃんが、ぎゅっと眉間に皺を寄せる。
『時渡りの力を集めているのは、ドミネウス国王陛下だ。軍団長を務めるクオード様がどんなに優秀な護衛を配置してくださっても、いくらでもやりようはある。マローネ様と御子息様の安全確保には至らん』
『どうするんですか?』
 相棒がわからねーんじゃ、オイラが分かる訳ねーよな。
『先ずは自分がマローネ様と御子息様の元へ、向かわなければならない。不眠不休でお二人を守る覚悟が、自分にはあるのでな!』
 ふみんふきゅーって、オイラなんか徹夜一回しただけで立ったまま寝ちゃうぞ。それでも、ファラスのあんちゃんのカラッとした笑顔が、マジで『一睡もしなくたって守り続ける!』って決意を感じさせる。
 それに最初は辺境だけだった異形獣の被害が、大きく大胆になってきている。閉鎖された浮島の出来事だから知れ渡ってないけど、王立アルケミアの研究員全員を口封じに殺した事が知れ渡るのなんか時間の問題だ。転送の門が開放され異形獣を送り込めて、ファラスのあんちゃんが守りたい人達の側に守ってくれる人がいない。ファラスのあんちゃんの余裕のない焦りを見てると、今が一番あぶねーんだろうって思うんだ。
『国民ではない旅人の其方らに頼むのは心苦しいが、正規の手続きを踏んで軍人達を動員する時間が惜しい』
 頼む。腰を直角に折って下げられた頭を、オイラ達は二人がかりで起こした。ここまで来たら、最後までお付き合いするってーの!
「絶対守るから、安心していーぞ!」
 オイラは不安そうな侍女の姉ちゃんに、にっかりと笑って言った。力が抜けた指からするりと手を抜くと、少し前まで赤ちゃんとママ様が幸せに過ごしていた部屋を飛び出す。
 日差しと影でくっきりと二分された世界に、ぬるっと異形獣が現れる。廊下に立つオイラを認めると、異形獣は頭を下げて前のめりになると凄い速度で突撃してきた。

状況説明だぜ!

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