ハコの厚みはここ次第!
■ Calendar ■
09 | 2025/10 | 11 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | |||
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
□ search □
『戦の舞』のリズムを刻み始めた僕に、ガルードさんは一瞬だけ視線をこちらに向ける。その横顔は楽しげに細められ、細い三日月の形の口元が耳まで裂ける。
しかし、目の前の異形獣から長く目を離す事は命取りになりかねません。
流石、戦闘に特化した個体として生まれただけあって、動きに無駄が無くなってきたのが素人目にもわかります。ガルードさんの動きをよく見て、威力と速度が増してきています。僕の叩く『戦の舞』リズムに、ガルードさんの動きが呼応するのも察したようです。戦闘センスの良さが、火種にメラを放つが如く瞬く間に吸収し体得してみせる。
最初は子供と大人のじゃれあいだったものが、ほんの少しの間に一流の戦士の戦いに進化する。二人の動きは鬼気迫る程に真剣で、まるでダンスをするかのよう。互いの動きを理解し、それ以上の動きを、それ以上の驚きを、時には要望にお応えした一撃をやりとりしている。
二人の周りは異様な熱気によって吹雪は届かず、陽炎に揺らめく円形の舞台が出来上がっていました。それらを囲むグレンの戦士達が、両者の戦いに応援の声を投げかけながら見守っている。
きゃっきゃっ! 異形獣から笑い声が弾けた。
『ズット ズット アソビタイ!』
撫でるだけで出血多量の深手を与える爪を紙一重で避け、ガルードさんは快活に了承した。
「イイトモ! オマエノ 知ラナイ 強イ奴! スゴイ景色! 楽シイ事ヲ 沢山 教エテヤル!」
その言葉に異形獣が尾を叩きつけ、軽い体が跳ねた。
『ミタイ! シリタイ! オシエテ!』
顔に当たる部分に巨大な宝玉がはまっているが、期待に目を輝かすという表現がこれほど似合うというような反応だった。鉄色の外装が心が浮き立って武者震いし、宝玉が日の出の輝きを放つ。ついに攻撃をやめて居ても立ってもいられず、その場をぐるぐると回り出した異形獣を見てガルードさんは大声で笑った。まるで業火のような低い大きな笑い声を響かせ、そわそわする異形獣のつるりとした頭を撫でた。
「最初ニ オマエノ ヒーローノ 名前ヲ 教エテヤル! オレ様ノ 名ハ ガルード ダ!」
ガルード! ガルード! 異形獣は大袈裟なまでに両手を叩き、打ち合わさった爪が歯の浮くような騒音を響かせる。そして、くりんと長い首をしならせて首を傾げる。
『ボクハ? ボクハ ナマエ アルノ?』
「オマエノ 名前ハ…」
ガルードさんが大きな手を顎に添えて、天を仰ぐように考え込みました。彼のことですし『ヒーローが名前を付けるのだから、カッコイイものが良い!』と思っているのでしょう。名付けとは魂にとって重要な儀式。真剣に考える事は大変良い事です。
ふふっ。僕は自然と笑みが溢れてしまう。きっと、神話にあった種族神ガズバランがオーガを己が子に決めた時、こんな光景だったのだろうと思ったのです。
「貴様には必要のない」
唐突な声だった。
無邪気な異形獣とも、快活で自信たっぷりなガルードさんの声でもない。なんの感情を含まない何の変哲もない男性の声が、全ての雰囲気を破壊したのです。その声を聞き、声の主を認識していた時には全てが遅かったのです。
異形獣の後ろに突然現れた黒い革鎧を纏った剣士は、すでに深々と異形獣の体に差し込んでいたのです。僕も、見守っていたグレンの戦士達も、目の前にいたガルードさんですら、その男の接近に気がつくことができなかった。
異形獣は期待を膨らませたまま、切られたことも知らずに、ゆっくりと体が傾いでいく。一つ澄んだ音を立て剣を振り抜かれると、異形獣の体から夥しい血が迸った。
「余計な感情が芽吹くとは、予定外なことばかり起こる…」
地面に激突して跳ねた拍子に二つに割れた体。パッと散った血飛沫が真っ白い雪を汚す。怒りに瞬く間に膨れ上がったガルードさんの背中に、彼の死が見えた。命を奪い目の前で痛烈な殺意を浴びせられた黒い剣士の顔には何の感情はなく、瞳は真っ黒に澱んでいる。
これが、アストルティアを滅ぼす災い。
僕は世界を滅ぼさんとする意志を、いくつか見てきたつもりだ。滅びゆく世界を存続させ、死にゆく命を見守ってきた者。己の存在を顕示すべく支配しようとした者。愛する者と世界を天秤に掛けた者もいただろう。その理由には、大なり小なり欲が絡んでいる。
しかし、目の前の存在は違う。
憎悪。
純粋で真っ黒い憎悪が、形を得て襲いかかってくる。
こんの黒衣の戦士ガチ目に許せん……………!!!!!
なんか、書いてるうちに幼少のガズバラン様ってヒーローにかぶれてそうな気がしてきた。強い兄貴に憧れて、兄貴兄貴ってついて歩いて、兄貴もまんざらでもないどころか可愛がってるのをエルドナにニコニコ見守られてほしい。
