忍者ブログ
ハコの厚みはここ次第!
■ Calendar ■
05 2020/06 07
S M T W T F S
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
□ Profile □
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
■ Booklog ■
□ search □
14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4

Twitterでは賑やかにDQ2生誕祭が催されていた頃、忍者ツールさんは深刻な事態に陥り、ここ数日の間に復旧してくださいました。たまにサーバー障害はありましたが、今回は特に深刻で運営の皆様は眠らずに復旧に励んでいたかもしれません。本当に頭が下がります。こうして無事に記事を書くことができて、嬉しく思います。

拍手もありがとうございます!なかなか反応できず、申し訳ない!

今回はそんな時に一筆したDQ2小説です。あんまりおいわいーって感じじゃない。すまぬ。


 サトリは体が弱い。
 本人曰く、生まれた時から棺桶に片足を突っ込んでいたらしい。その言葉に嘘はないだろう。サマルトリアの王子の評判は、ここ数年でようやく人々の耳に触れられるようになった。それより以前は、国王陛下がサトリ王子の棺桶をまた新調なさったという大変喜ばしくない話題だ。ローレシアの傭兵達も、サマルトリアの次の王は女王なんだろうなと他人事でも思っていた。
 俺には縁のない人ではあった。だが、傭兵国家ローレシアに国として王子護衛の依頼があり、託されたのが俺であるならば避けることのできない問題だ。
 サトリの事を調べて心配になった虚弱体質であるが、本人は俺以上に自分の体調に気を使ってくれる。旅の間は突然の熱発や体調が低迷することはあるが、旅の日程を大きく変更するほどの大事に至ったことはない。
 それでも、数ヶ月に一度程度でくる。すごく、体調が悪い時が。
「うーん。これはまいったなぁ」
 部屋の扉を閉めて唸る。ローレシアに所属する傭兵は近くの組合の援助を受けられる。その一つには医療的な援助もあり、常駐していた医師がサトリの容態を見てくれた。医師はただの風邪とも、すぐ良くなるとも言わずに、少し時間をくださいと言って足早に帰っていった。難しい状況らしい。
 俺も切り傷やら感染症には多少の知識はあるが、酷い風邪のような状態に対してどうこうできる知識はない。栄養のある飯は用意できるが、それをサトリが食えるかどうかは別問題だ。
 小動物の足音のようなものが聞こえて顔を上げると、ルクレツィアが心配そうな顔で近寄ってきた。麗しきムーンブルクの王女様は、サトリには勿体ないほどの心配を寄せてくれているようだ。白い顔が青くすら見えて可哀想だ。
「サトリさん、調子よくないの?」
「うーん…」
 なんと言ったら良いものか…。下手したら死にそうなんて、とても言えそうにない。
 俺はにっこり笑って、ルクレツィアの頭を撫でた。
「大丈夫。サトリは最近調子が良かったんだって、寝る前にはぶつくさ言ってたからな。起きたら昨日の礼拝に行けなかったとか悔しげに言うんじゃないのか?」
 そうだったらどれだけ良いか。歪んでしまう表情筋をどうにか堪えて、俺は顔を上げた。誰かが駆け足でこちらに向かってくる。ルクレツィアが振り返った頃には、足音の主は廊下の角を曲がって勢い余って壁に肩をぶつけてしまった。組合の医師ではない。美しい新緑を彷彿とさせる明るい緑と金の縁取りのサーコート。胸のプレートにはサマルトリアの国章である風木犀が刻まれている。まだ若そうな兵士は、俺の顔を見てはっと表情を改めた。
「王子の護衛をしている、ローレシアの傭兵は君か?」
「はい。ローレシアの傭兵のロレックスです」
「いやぁ、探しましたよ。君らを途中で見失っちゃって…。これ、姫様から早めに王子に届けるようにって厳命されたので、任務を果たせないかと思いました」
 これ。差し出されたのはひと抱えもある布袋だ。大きい何かが入っているようだが、多きさの割にはとても軽い。
「開けて、確認してもいいですか?」
 目配せした兵士は手短に『どうぞ』と頷いた。
 袋はなかなかの業物だ。中身が汚れたりしないように防水撥水に優れた素材に、さらに衝撃や切り裂かれないようスカラの文様が全面に刺繍されたものだ。布袋だけでちょっとした鎧が買える。その中に入っていたのは…
 俺は、目を擦った。ちょっとあり得ないものが見えたからだ。
 二度見してもあり得ないと思ったものは別のものにならなかった。仕方なく、俺は袋から取り出して見た。ルクレツィアが露骨に目を輝かせて見せる。
「くまさんだ!」
 そう、くま。くまのぬいぐるみだ。かなり大きいのと、ちょっと小さめのが、袋から出てきた。
 これを、サトリに届ける。サトリは妹は大変マイペースで何考えているか良く分からないと言ってたが、とても旅に必要なさそうなものを、兵士に厳命させて届けさせるとは…。常識的に考えても、変わってるなぁ。
 固まる俺をよそに、ルクレツィアがクマを抱き抱えた。じっくりと赤金色の瞳がくまを見つめると、嬉しげにサトリの部屋に持っていこうとする。ま、まぁ、サトリは寝込んでるし、くまが添い寝するのは構やしないか…。
 扉が開いて閉まる音を聞きながら兵士に向かい合えば、兵士も自分が運んでいたものを見て複雑そうな顔をしていた。袋の上から触ったりしてみて、中身は察していたがまさか本当にくまのぬいぐるみを運ばされていたとは…という所だろう。ご愁傷様だな。
 気まずい雰囲気を取り持ってくれたのは、戻ってきたルクレツィアだった。
「サマルトリアのお姫様は、とってもお裁縫が上手なんだね!」
「あぁ。この袋もご自身でお作りになられたんだ」
 兵士も少し誇らしげに微笑んだ。確か、ルクレツィアより少し年上だったろうけど、その年齢で職人ならば工房を任されるのも時間の問題というレベルの物が作れるのだ。将来有望に違いないだろう。
 少し気持ちが明るくなったが、サトリの容体が改善した訳じゃない。難しい顔をした俺の袖を、ルクレツィアが引いた。
「大丈夫だよ、ロレックスさん。くまさんがね、サトリさんを助けてくれるよ」

 ルクレツィアの言葉の通りだった。サトリは翌日、今までの不調が嘘みたいに回復した。
 兵士が持ってきたくまは、一晩で真っ黒くなってボロボロになった。それをルクレツィアは教会に持っていって、感謝の言葉を掛けながら炊き上げたのだった。俺と兵士は心底不気味に思いながら見守るしかなかった。
「まったく、あいつは、どうしてくまのぬいぐるみを寄越してくるんだ…!」
 そんなことなど全く知らないサトリは、律儀に妹の作ったくまのぬいぐるみと寝ている。
PR


Comment
Name
Title
Color
Mail
URL
Comment
pass

Copyright © ハコの裏側 All Rights Reserved.
Powered by Ninjya Blog
忍者ブログ・[PR]